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第五回 コピーのプレゼンとステートメント
三島邦彦
コピーのプレゼンテーション
コピーのプレゼンというのは、とても悩ましいものです。
ぱっと見で人を惹きつけるのがキャッチフレーズの使命だとしたら、そのコピーを出した瞬間にもう勝敗は決まっているはず。説明が必要なコピーはそもそもコピーとして大事な何かが足りていないのではないか。説明が必要なコピーをうまくプレゼンして世に出したところで、何の意味があるのだろうか。プレゼンの直前にはいつも、そんなことを考えてしまいます。
そして、コピーのプレゼンというのは極めて地味です。CMのようにコンテがあるわけでもなく、グラフィックのようにイメージカンプがあるわけでもない。CMプランナーはコンテをもとにして想像がふくらむような語りが得意な人が多いですし、アートディレクターもどんなビジュアルを作ろうとしているかについて語るべきことがある。CMプランナーやアートディレクターが目の前にあるコンテやカンプではなく、これから作ろうとしているまだ世には存在しない何かの素晴らしさについて語るので、聞く人も期待感が高まるのです。
しかし、コピーはそこに書かれている文字がそのままアウトプットになる。その点においては、何の言い訳もきかないわけです。なので、コピーの最大のプレゼンテーターはそこに書かれたコピーそのものです。
コピーライターは、プレゼンが上手くある必要はない。しかし、見ればわかりますよねということはできない。何らかのプレゼンはしなくてはいけない。なので、僕のプレゼンへの姿勢は極めてシンプルです。
考えた過程を話す。どういう得があるかを話す。
コピーのプレゼンは、この2点に尽きると思っています。
コピーの良し悪しはもう相手がコピーを見た瞬間に決着がついている。極端なことを言えば、目の前のプレゼン相手が決定権を持つ場合はコピーを見せるだけで終了しても構わないはず。しかし、決定権を持っているわけではないクライアント担当者へのプレゼンの場合、ことはそれほどシンプルではない。彼らが求めているのは、そのコピーをどう上に説明すべきかの論理だったりする。そうした要望を満たすために、まずはどういう思考過程でこのコピーが生まれたのか、オリエンとの整合性や企業や商品との整合性を説明します。
オリエンの中で重要だと思ったキーワードの抽出。オリエンには書かれていない自分なりの着眼点。参考になる過去の名言。このあたりの材料を順番に語りながら、コピーを書くにあたって大事にしたポイントや切り口の発見を説明します。
実際の自分の思考プロセスそのものというよりは、後づけというか、理解しやすく整理したものになることが多いですが、受け手であるクライアントがコピーに至る思考を追体験できる感覚が大事だと思っています。あくまでもコピーの必然性を理解する上での補強ですので、自分の想いをぶつけるというよりは、ある種の客観性をもって解説するという気分でいた方がいいと思います。
感覚や発想は共有できないけれど、論理は共有できる。与えられた条件からすると論理的必然としてこのコピーに至る。その必然性を演出するのです。
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