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言語化を言語化してみる ②「矢印をひく」

小川祐人

みなさんは、普段生活している中で、こんなコピーを目にされたことはないでしょうか。

 

明るい未来を、ともに。

 

美しさの、最高峰へ。

 

かわいいって最強。

 

それは政治家のポスターだったり、マンションのチラシだったり、雑誌の広告だったり。もはや、「この国の風景の一部」にも感じられるような言葉たち。最初にお断りをしておくと、これらは決して「間違ってはいないもの」だと思います。ただ、何というか、おもしろくない。ありふれていて、新しさがない。

自分を棚に上げて言ってるわけではなく、これは実際の仕事でも起きることだったりします。考えた末にひねり出した渾身のコピー、いざ入れてみたときに「この言葉、別になくても成立するよね?」なんて言われた日には……ああ、こわいこわい。

 

コミュニケーションの仕事において、その言葉はどうすれば「なくてはならないもの」になるのか。今回はそのことについて(おそるおそる)考えてみたいと思います。

 

前回は、「言語化と仮説」について考えました。

 

言語化できることは、役に立つ。

いい言葉には、仮説が含まれている。

 

この「仮説」を言葉にどう込めていくのか、というのが今回のテーマです。

 

まず、そもそも何でコピーというものは「ありふれたもの」ではなく「新しいもの」でなければならないのでしょうか。理由は色々あると思います。

 

・目立たないから。

・パクリになってしまうから。

・つくっていておもしろくないから。

 

などなど。

僕は、一番大きい理由として、「コピーは何かを変えるためのものだから」だと思っています。

 

企業であれ個人であれ、ビジネスにおいてコミュニケーションの仕事を発注するときには「変わりたい」という願望が根本にあるはずです。それは売上を伸ばすことだったり、課題を解決することだったり、価値観を問い直すことだったり。

 

冒頭に挙げた、例えばのコピーたち。それが「なくてもいいもの」に見えたのは、「何かを変える」という目的から外れているように感じられたから、ということになります。

 

何から何へ変えるのか。その言語化を、すべての真ん中にしてみる。

僕の場合は、矢印(→)を引くところから始めます。

 

A → B

 

Aには常識やこれまでの慣習が、Bには自分なりの仮説が、それぞれ入ります。

自分の仕事から、具体例を挙げます。

 

数年前から、カネボウ化粧品さんのお仕事を担当させていただいています。KANEBOというブランド(いわゆるデパコス)の、リブランディングです。

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