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アドさんぽ 第二話
吉兼啓介 / 尾上永晃
吉兼 アドさんぽ第2回目は新年一発目ということで、明治神宮から北参道を歩きたいと思います。
尾上 参拝もしながらね。
吉兼 あ、覚えてます?第1回目の最後で「無駄話の重要性を次回話す」って尾上さん言ってたの。
尾上 はっ! ネタバレすると、無駄話の何がいいのかは『くらしのアナキズム』という本に書かれています。
吉兼 はい。
尾上 そこで「多数決は民主主義ではない」って書かれていて、なんでか分かる?
吉兼 えー、少数派の意見が通らず議論が終わっちゃうから?
尾上 さようです。その本ではダム建設のことが書かれていて。反対派、賛成派が割れたときに、賛成派の人が反対派の家一軒一軒巡って、とにかく茶飲み話を繰り返して、信頼を獲得するらしいんですわ。で、全員の賛成を得てから多数決を取るという話から、無駄話が信頼獲得のためにけっこう重要なのではないかと書かれてて。これすごいわかるなと思って。
吉兼 広告にもそれが生かされていると。
尾上 そう。それは信頼というものが弊社においてはビジネスプロデューサー、博報堂社においてはビジネスデザイナー、いわゆる営業職だった人たちが、クライアントと日々コミュニケーションを取ったりごはんを食べたりなど、いろんな話をすることにより信頼というものを得ているから、クリエイティブ職の連中みたいなのが適当なアイデアを出したりしても形にすることができる面もあるよね。やっぱチーム全体でやってること忘れてはならんなと思う。
吉兼 なるほど。特に電通はそういうの強そうね。あと営業だけじゃなくてさ、クリエイティブでも無駄話って大事だよね。
尾上 そうね。 信頼構築になるし、企画につながるよね。小田桐さんの本(『小田桐昭の幸福なCM』)って見た?
吉兼 あー見た見た!
尾上 みんなで喫茶店で無駄話をひたすらしているうちに企画ができていたと。
吉兼 でもさ、単なる無駄話をしていればいいわけじゃなくて、きちんと企画になる無駄話をしないと。ただの無駄話してるクリエイティブおじさんになっちゃう。
尾上 そうね。いい仕事を生むためには無駄話をうまく誘導するキュレーター的な役割が必要かもね。
吉兼 福部さんはそうだよね。カロリーメイトの仕事はまずグループインタビューから始めるって聞くじゃん?そのキュレーターというか司会進行をいつも福部さん自らがやっていると。そこで出たいろんな無駄話を汲み取って無駄話じゃ無くする。うまく企画にしているんたよね。
尾上 そういう話が無駄話のいいところという話で。
吉兼 はい、無駄話をしている間に、もう本殿に着きました。
尾上 そういえば、初詣も広告キャンペーンって知ってた?
吉兼 え、マジで!?
尾上 鉄道会社の広告キャンペーンの一環らしく。もともと初詣って近くの神社でやるものだったのを、遠くの神社で初詣しようって打ち出したんだよね。もともと成田山とか川崎大師への初詣を進めるキャンペーンで。
吉兼 えー知らんかった。広告すごいな。
尾上 ちなみに…神ログってどう?
吉兼 カミログ?
尾上 人間がおみくじの結果を評価するのような仕組み。勝手に大凶とか言われるのって一方的じゃない?だから、年間通して実際どうだったかを年末に評価するっていう。いや、全然大吉でしたんで間違ってます。みたいに。
吉兼 明治神宮で罰当たりなことを。笑
尾上 失礼。笑
吉兼 もう4,5年前の飲み会かな?電通の佐藤雄介さんちを一緒にピンポンダッシュしたじゃん。
尾上 ああ、したね。
吉兼 その飲み会か帰り道かで、尾上さんと「ヌルヌルした床の中華料理屋はうまいよね!じゃあさ、床がヌルヌルした店だけを集めたマップをつくるの面白くない?」みたいな無駄話をしたのよ。で、それって企画だね!ってなって感動したのを覚えてる。
尾上 無駄話からしか生まれない企画もあるよね。
吉兼 神ログとか、ヌルヌル中華マップなんて実際はやりはしないけど。笑
(静かな参拝時間)
吉兼 参拝のときさ、心のなかで願い事を言ったあと、自分の名前と住所って言ってる?
尾上 言ってない。結構信心深いのね。
吉兼 住所いうと願い事を届けてくれるって聞いてから唱えてます。あ、御札も買おっと。
尾上 願い事を叶えるシステムについても最近思ったことがあって。いっぱい来るところで願ってもワンオブゼム感強すぎて効果ないんじゃないか?とか思ってたのよ。
吉兼 それくらいは余裕なんじゃないの。神だよ。
尾上 だって、すごい量じゃない。ただ最近のつみたてNISAとかの流れみてて、そうか、願い事も運用型だとしたらその願いを大量に運用することで幸運をたくさん戻すことができるんじゃないかっていう。つみたて願い事NISA。
吉兼 すげえ罰当たり。笑
尾上 我々が仕事においても、得た信頼を運用しているようなところがたぶんあって。つみたてNISA的にこつこつ積み上げる案件もあれば、一発みんなで狙いに行って当てるぞみたいなやつは新しい技術の株とかそっち系の印象で。
吉兼 そういえばさ、宗教も広告かもね。キリスト教とか。
尾上 さすがです。BBDOの創設者の一人が書いた『イエス・キリストの広告術』という本があって、それは超名著。
吉兼 へぇ、売ってるの?
尾上 今はもう売ってないと思うよ。俺もネットで200円で売りに出てたのをたまたま買ったもん。
吉兼 え、今度貸して!で、なんて書いてあるの?
尾上 キリストってもともと大工の棟梁だったから、褐色のマッチョで、かつ話が面白い爽やか系だったらしい。その上で、自分の見え方とか語られ方とか気にして辻説法おこなったりと広告的なことを意識していたらしい。その本ではPR文脈で語られていた。
吉兼 えー意外。ガリガリのキリストしか知らない。
尾上 彼が死んでからだんだんガリガリになっていったんだって。苦しい人々が、マッチョの褐色の話うまいお兄ちゃんのことを信仰対象として信用できるかって話。
吉兼 信用できないかも。笑
尾上 だから彼の弟子とか、その後の信者たちが、そういうふうなキリスト像にしていったんじゃないかみたいなのが本に書いてあった。持論ではない。
吉兼 炎上するからね。あくまで本に書かれていた話です。笑
尾上 今回は無駄話と信頼みたいなテーマだね。信頼とかでいうと、クリエイティブの若手目線でいうと、CDの信頼獲得も大事じゃない。
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