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世界の広告を、勝手に因数分解してみた。Vol.3
世瀬健二郎
こんにちは。世界のアイデアをひたすら収集するTwitterアカウント「IDEAFUL(@ideafuls)」の中の人こと、世瀬健二郎です。本業は上海で広告クリエイティブをしています。
新旧問わず、広告やキャンペーン、多種多様なアイデアを広告クリエイターの視点から勝手に因数分解していく当コラムも、今回で3回目になりました。いずれも完全なる僕の妄想なのですが、優れたアイデアの思考の過程をリバースエンジニアリング的に辿りながら、日頃のプランニングのヒントを探そうという趣旨で書いています。
今回は話題の旬の長尺ビデオ広告を3本ほど取り上げ、その物語が生まれた背景をがっつり妄想していきます。映像はストーリー展開やインサイトフルなメッセージングもさることながら、1秒1秒に凝縮された作り手の想いが見え隠れする、クラフト力が際立つ表現フォーマットです。特に今回取り上げる長尺モノは、ディテイールまで因数分解しがいがあるに違いありません。アイデアの発見のみならず、それをどのように映像表現として定着させたのか。そんなところに注目しながら、事例をクリエイター視点で紐解いていこうと思います。それでは、今月も僕の妄想にお付き合いください!
伏線回収が気持ち良すぎる、ドコモの受験者応援広告
IDEA1: 「手のひらにはいつだって」NTT docomo
出典:ドコモ青春割
一つ目に紹介するのは、NTT docomoの学生向けのプラン「ドコモ青春割」の広告です。2分26秒の長尺なのですが、今年の1月に公開されてから再生数は1,500万回を達成(2023.2月末時点)。学生はもちろん、大人にもズキッと心に刺さる映像に仕上がっています。まずは先に映像を見ていただいてから、読み進めてもらえたらと思います。
出典:音楽ナタリー
個人的にこのアイデアの一番素晴らしいところは、その“伏線力”にあると思っています。「手のひらに人と書いて飲む」という日本人なら誰もが知っているおまじないが冒頭に出てきますが、初めて見た時、ストーリーのアクセントくらいで僕は捉えていました。ところが最後に「私の手のひらにはいつだって人がいた」という主人公のセリフが入った瞬間、「そう来たかー」とズバーーンと心を撃ち抜かれるような驚きと気持ちよさがありました。バイラルムービーではある種セオリーの一つとなっている「最後のどんでん返し」的な展開の起伏は、この映像を成功させているキーの一つだと思います。
また、見終わった後には映像中のスマホ(ドコモ)と主人公の様々な関係が走馬灯のように蘇り、自分の手のひらにあるスマホが少し恋しくなるような感覚すらありました。話題化に比重を置くあまり、何を伝えたいかを見失ってしまうケースもありますが、「クライアントをちょっといい存在にする」という広告として当たり前のことをきちんとやりきっている点も素晴らしいと思っています。
さて、ここからは
おなじみの勝手に因数分解コーナーに移ります!
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