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アドさんぽ 第三話

吉兼啓介 / 尾上永晃

吉兼       アドさんぽ3回目は、北参道から歌舞伎町を散歩したいと思います。

尾上       よろしくお願いします。

 

 

吉兼       反骨精神って大事だよね。

尾上       いきなりだな。

吉兼       いや、尾上さんが前回言ってた神ログとかさ、突飛なことを考えるじゃん。ルールに則ってないこと。俺でいうと日清のラ王のCMで、子ども商品名が言えてない。とか、ああいうタブー。

尾上     ああ、企画の反骨精神ね。

吉兼      そう。自分の若いとき、企画がCDに通らなくて「なんでこんな面白い案が取らないんだ」と思ってたわけ。そのそき「はいはい、面白くないですよね」って認めるんじゃなくて「いや、面白いじゃん!」って自分の中にある吉兼を守ろうとしてた。心の中でね。それはいわゆる反骨精神ということで、反骨精神があったほうが自分の面白さとか明確になるし、世の中での企画の目立ち度につながっていくんじゃないかな。

尾上       鼻息荒い。ただ、良い反骨と悪い反骨もあるような気が。

吉兼       え?

尾上       ただの反骨野郎だとすぐクビになっちゃう。仕事に呼ばれなくなるよね。

吉兼       そうね。ただのシド・ヴィシャスみたいな反骨野郎と仕事しずらいかもね。もうちょっと腰の低い、七三分けの反骨野郎がいいかもね。そういえば、ワトソン・クリックの山崎さんと何度か食事させてもらったんだけど、僕なんかみたいな奴にすごい腰が低くてビックリしました。でも作るものは反骨精神に満ちあふれている。ゴンパさんもそうだよね。話すと柔らかくていい感じなんだけど、案が見たことないパンクなもの。そういうものに僕は憧れますね。はい。

尾上       ゴンパさん山より大きいのに優しいよね。反骨精神を持っていても、話をしやすい状態にしとくってことなのかな。逆だと嫌だね。

吉兼       逆だと嫌だ。反骨精神あるのに面白くないみたいな。

尾上       見た目パンクで面白くないって嫌だね。笑

吉兼       もうこの辺り、代々木界隈ですね。あ、そういえば尾上さん年末にどっか旅行行ってなかった?

尾上       チベットに行ったのよ。

吉兼       チベットにセブンイヤーズも行ってたんですか?

尾上       それ映画ね。数日よ。

吉兼       チベットは何が有名なの?

尾上      バター茶を飲みました。お茶にヤクのバター溶かしやつでしょっぱくて美味しいの。みんな飲んでる。ポタラ宮もいったんだけど、みんな信仰熱心で灯火の下の油部分に持ってきたバターを入れていくのよ。それくらいヤクのバターが大事なものになってる。普通に旅行でいく場所とあまりに文化が違ったから、帰ってきてから二ヶ月近くたつけど、まだなんかあっちの世界が近くにある感覚がある。こうやって全然違う文化圏の人たちの生活に触れることで、日々暮らしながらも他者が自分の中に内在するようになるのはとてもいいことなんじゃないかと思いましたわ。世界は近くだけじゃないっていうね。

吉兼       でもそれって、ニューヨークの友人カメラマンでもいいんじゃないの? 田舎のおばあちゃんとかでも。

尾上      田舎のおばあちゃんは近いかもね。

吉兼       てか誰か意識してつくってる? たとえばCMとかプロモーションとかつくるとき。商品のターゲットとは違う、誰に見てもらおうっていう、普遍的な誰かというのっているの?

尾上       いや、あんまりいないけど、まあ自分だね。

吉兼       自分?

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