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ちょっと変わったCDの社会人キャリア③「いくつもの試練」篇

北尾昌大

連載3回目のご挨拶

 

今回も記事を読んでくださり、ありがとうございます。はじめましての方は時系列の話ですので、1回目から順番に読んでいただけたらうれしいです。

 

今回もYさんとのインタビュー形式でのやりとりで、当時のことなどを振り返っていければと思いますが、副題が「いくつもの試練」篇。この時期、いろいろとつらいことがありました。そんな試練の数々の話です。

 

1人クリエイティブチームという試練

 

Yさん:
まず、前回までのおさらいをすると、CMじゃなくて地味な店頭VPだけど自分で仕切れる月刊任天堂の仕事を担当されたというお話でしたよね。

 

北尾:
そうだね。任されて自分の責任で出来る仕事があるっていうのはうれしかった。やりがいが違う。だから1本ごとに趣向を凝らして一生懸命つくったのね。そうしたら、それが任天堂さんの宣伝部さんの目に留まった。

 

Yさん:
すごいですね!

 

北尾:
任天堂さんからしたら会社の歴史の中で、TVCMはこれまでも長い間ずっとやってきたけど、この店頭映像はあたらしい試みだから社内での注目度が高かった。「これの担当は君か?」「次はこんなことやってみようや」と、規模も小さいからフットワーク軽くいろんなことにトライさせてもらったし、制作する本数が多いから必然的に宣伝部さんと接する時間も長くなっていく。そんな感じで、関係性がどんどん濃くなっていって、任天堂担当としてCMも担当するようになっていったんだよね。

 

Yさん:
ちゃんとやったことが結果につながったサクセスストーリーですね。

 

北尾:
ただ、ここでつらい問題が起こってしまったのです。

 

Yさん:
どうしたんですか?

 

北尾:
広告代理店では、基本的にクリエイティブはチームで仕事をします。今はデジタルの担当がいたりと少し異なるかも知れないけれど、当時で言えばCD(クリエイティブ・ディレクター)がいて、その下にCMプランナー、コピーライター、AD(アート・ディレクター)の最低4人が1つのチームでCMを企画・制作するのが当たり前。

 

それが自分のケースは、ラッキーなことにCM案件も任されたけど、店頭VPの流れでやっていたので自分1人のチームでCM制作を完結させた。会社的には「それはいかんだろう」と、次の作業からは先輩たちがアサインされてチームが組成される。自分としては、そうなれば後輩として先輩についていく形になる。でも、そうするとうまくいかずクライアントさんからは不評になる。それを繰り返すと、自分もやらずとも結果が分かってくるので、会社が先輩を用意してくれても「これだとうまくいかないですよ」と言わざるを得なくなる。

 

これは決して自分が優秀だって話ではなくて、アサインされる先輩の方が優秀で経験も豊富なんだけど、この案件には向いていないかも知れないという話なんだけど、それを理解してもらうのは難しくて、単純に生意気な若造だとなってしまう。つらかったなぁ。

 

Yさん:
それはむずかしいですね。でも、なぜ北尾さんだけがハマり先輩たちはうまくいかなかったんですか?

 

北尾:
いくつか理由があると思う。でも、いちばん大きいのは若かったことじゃないかな?任天堂さんとしたら一緒になって作ってくれる人を求めていたように思う。だから、自分のやり方がまだ明確になく、チームもないから柔軟に一緒にやってくれる、そんな自分みたいな存在がやりやすかったのかも知れない。加えて、自分自身も、そもそもチームよりも1人でやることを志向するタイプであったし、あとはhideさんの話から一貫して「おもしろいCMをつくりたい」よりも「ちゃんと商品を伝えてちゃんと売りたい」という根本の思想の部分もあったかな。

 

ただ、今でこそその限りではないのかも知れないけれど、当時でいえば1人でCMを作っている人はいなかった。知らず知らず業界の常識から外れたイレギュラーなことをしてしまっていたんだね。

 

Yさん:
それは会社からしたら扱いにくかったんでしょうねぇ。

 

北尾:
でも、自分もつらかったよ。ただひたすらに目の前の仕事に精一杯答えていて、結果も出しているのに、何が悪いのかがよく分からない。そして、それが決定的なことになる作業が3年目の時に。

 

Yさん:
3年目・・・。それはどんな案件だったんですか?

 

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