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全クリエイターの必須教養「エブリシング・エブリウェア・オール・アト・ワンス」
橋口幸生
「広告クリエイティブの仕事をしている人は、毎年、アカデミー賞の作品賞にノミネートされた作品をひと通り観てほしい」
友人の映画解説者から、こんなことを言われたことがあります。
今や映画は、おもしろさだけでは評価されない時代になりました。作品の中に、社会的なテーマがあることが求められるのです。たとえば「ジョーカー」や「パラサイト 半地下の家族」は「格差」を、「コーダ あいのうた」は障害を描いています。つまり、世界のクリエーターがどういう視点で世の中を見ているか、作品賞ノミネート作を観ることで手取り早く学ぶことができるのです。
日本の広告業界でも、賞レースに絡んでくるような作品には、社会性が求められるようになりました。世界トップレベルの映画やドラマを見ることは、広告クリエイターにとっても学びが大きいはずです。
そこで、この連載では、ADBOX会員の皆さんにオススメしたい世界の映画やドラマを紹介していきたいと思います。第1回は「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」です(2023年3月3日公開予定)。僕がここ数年観た映画の中でもベストのひとつで、世界の映像芸術の潮流から見ても最重要作と言える映画です。
あらすじを説明すると、小さなコインランドリーを経営しているおばさんが、カンフーを駆使して、多元世界を破壊しようとしている魔王と対決するというものです。意味が分からないですね(笑)。解説をする前に、なぜ本作は重要なのかの背景を説明したいと思います。
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