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アドさんぽ 第五話
吉兼啓介 / 尾上永晃
吉兼 えーと、前回は散歩せず天丼屋で1話ぶん終わっちゃいましたので、2本撮りしちゃおうと思います。
尾上 飛鳥山公園から十条商店街までですね。
吉兼 はい。そういえば俺、最近健康なんですよ。
尾上 それはこの散歩のおかげ?
吉兼 いや、最近息子が野球始めたから、少年野球のコーチしてるのよ。
尾上 え、意外!金髪なのに。
吉兼 でさ俺、小中高野球部で、めちゃくちゃキツかったのよ。本当に甲子園目指して坊主でやってたから。
尾上 すごいよね。
吉兼 1年で3日くらいしか休みがないわけ。お正月の3日間くらい。やめたくてやめたくて。
尾上 なんでやめなかったの?
吉兼 やめてくやつが次々とヤンキーになってくのよ。やめたら絶対そっちのゾンビコースだなと思ってやめなかったの。で、やめないほうが良かったね、やっぱ。
尾上 良かったね、やめなくてね、今。
吉兼 そういうつらい思い出があるから、もう二度と野球なんてしないと思ってたの。けど、やってみるとやっぱ楽しいんだよね。
尾上 まあ楽しいから最初始めてたんだもんね。
吉兼 そう。その頃の感覚を思い出したよ。
尾上 あんまり追い込まず、楽しい野球を教えていこうと。
吉兼 そう。だから、代々木公園とか幡ヶ谷のあたりで、僕は毎週野球をしています。尾上氏は最近スポーツやってますか?
尾上 歩いてる、すごく。毎日1万歩以上歩いてる。
吉兼 それは歩こうって決めてるの?
尾上 決めてる。クライアントの帰り道は歩いて帰るとか。
吉兼 へえ。企画するときってさ、歩きながら企画とかしない?
尾上 する。
吉兼 するよね。なんか身体動かしてるほうが脳が活性化するよね。
尾上 するし、発散モードになるでしょう。
吉兼 街中の関係ないものと結びつけたりしない?
尾上 するけどさ、その案通んないんだよな、大体。
吉兼 夢の中で考えた企画絶対通らないみたいなね。
尾上 そうそう、結局通るのは最初のほうに考えた、まあこういうことかなみたいなやつだったり。
吉兼 でもさ、東畑さんが言ってた企画方法でさ、TSUTAYAに行ってクライアントの商品と映画のタイトルを片っ端から強引に結びつける。そういうのもしてたな。
尾上 面白い。けど、それ選ばれないでしょう?
吉兼 選ばれない。けど、プランCとして幅を見せる。
尾上 幅を出すのにはいいよね、無理やり。そういう、意味はないかもしれないんだけどさ、まあなんかどこかで意味あるかもねみたいな。楽しくやるためには大事だよね、そういうのは。
吉兼 そうだね。
尾上 まあでも見るよ、よく街は。俺なんかとくに、掲示板みたいなやつとか。たまにおうちでも、出窓がある家とかで、外向きに人形を置いてくれてる人とかいるじゃん。
吉兼 ああ、いるいる。
尾上 ああいう人がいっぱい増えたら、その街名所になるぞと思ってるわけ。出窓って世界との接点だからね。
吉兼 なんかあれじゃん、なんだっけ、窓の会社。
尾上 窓の会社、YKK。みたいなこととかが。このニュースくんとかさ。
吉兼 これは新聞の自販機ですね。ニュースくんって書いてある。ニュースくん、いいね。
尾上 ドープじゃない、これは。
吉兼 全部に「くん」づけすると商品になるよね。
尾上 なる。
吉兼 からあげクンってやっぱ「クン」つけたから売れたよね。
尾上 たしかに。からあげクンもジェンダーの波に飲まれて、どこかでからあげチャンとかからあげサンとかになる?
吉兼 からあげチャン出てくると思うよ。てかもう出てるのかもね。で、からあげクンのいいところはね、やっぱからあげサンにしなかったとこなの。
尾上 からあげサンだったら距離感じるもんな。
吉兼 そう。ちょっと食べにくいじゃん、先輩だから。
尾上 先輩だもんね。
吉兼 からあげクンだから食えるのよ。
尾上 からあげクンって、あのからあげに対してクンって呼んでるのか、からあげクンというやつがつくってるのか、どっちなんだろう。
吉兼 それはどっちでもいいな。(笑)てか俺も会社辞めたら企画クンにしようかな。
尾上 企画クン。
吉兼 言いにくいけど。あ、この道を左だ。左に大きくカーブします。
尾上 ああ、そうかそうか。このパノラマプール来たことありますよ。
吉兼 なんで?
尾上 同期の村田と。
吉兼 仲いいね。村田さんもこのへんだったの?
尾上 全然違うところ。そのときは六本木かなんかで。そのときはあれだったのよ。遠泳大会に出ようっつって、同期連中で。
吉兼 なんかドーバー海峡横断部みたいな。
尾上 横断部みたいな感じで、練習すげえしてたの。で、もう各所のいいプール行ってみようっていうので、ここにも来たわけですわ。その後、飲みにでも行くかって飲み屋探してても、全然見つからねえじゃねえかってなって。このまま上野まで歩きながら飲んだら面白いよなというところから、そうか!歩きながら飲んで、各駅でやってったらずっと楽しいじゃん!って思いついた。
吉兼 ずっと酔わない。
尾上 そう。それで始まったのが「上野天国、赤羽地獄」という。上野では最初に朝5時とかに集まって、始発で。飲んで、もう元気で楽しく天国だが、歩いていって赤羽に着く頃にはもう地獄のように酔っているというので赤羽地獄。そんなんが昔に始まったのよ。
吉兼 廃部?
尾上 いやいや、7、8年やってます。けっこう社内認知度は高くなってきて、最近では後輩たちが、すいません、まねしちゃいましたって言ってきたりする。全然いいよ、むしろ広めていこうよみたいな。
吉兼 それはなんかいいことあんの?
尾上 まあ楽しいよね。
吉兼 飲み会とかよくあるじゃん、会食とかも。でも酒飲むと翌日よく覚えてないじゃん。
尾上 覚えてない。でも歩いてると、歩いてるうちに酔いが覚めるから、ずっとうっすら覚えてる。
吉兼 ああ。それもそれで嫌だね。
尾上 うっすらだから。あと歩きながら、やっぱ街が楽しいじゃない。初めて見るもの多いし。飲み会だとさ、おんなじメンツで毎年やってると、いうても盛り上がりは去年より下がってるなとか思っちゃうのがないのよ、街に依存してるから、俺たちは。
吉兼 街と一体化してるの?
尾上 街と一体化してる。
吉兼 そういう敵いるよね。
尾上 街と一体化する敵? ピーカ?
吉兼 ピーカ、そうだ。
尾上 『ワンピース』のね。
吉兼 クロちゃんみたいな声のね。
尾上 とかっていう、話がだいぶあれしましたけど。街を歩いたりしているのとかけ合わせていく企画法というのも、いつか生きるかもねということでいいかもしれませんし、シンプルに街の中にある事象なんかも何かのヒントになったり、面白いこともあるのではないでしょうかということですね。
吉兼 あると思います。だって博報堂をご勇退おされた宮崎さん。としまえんとか、大貫さんとずっとやってた。
尾上 あ!チャリが全部倒れてる。
吉兼 本当だ。こういうのも企画になりますからね。
尾上 なるでしょう。これで一番端っこにチャリを支えてるやつがいたらさ。
吉兼 そうそう。筋トレのゴールドジムの広告になるし。
尾上 ごめん、宮崎さん。としまえんのね。
吉兼 そう「企画は道端に転がっている」という名言を残したのです。でもそうなんですよね。
尾上 そうだと思うよ。
吉兼 身近なものからでしか企画はできないですもんね。
尾上 うん。そう思う。その道端がさ、果たして見える道端なのかということもありますよね。
吉兼 どゆこと?
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